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概要

masters2019

34会報 <日本マスターズ柔道> 2019年1月9日第九回ベテランズ国際大会参戦記世界ベテランズ柔道大会に参加して感じたこと―日本の柔道人口減少にはどめを!神奈川県 井田 幹夫 今回メキシコ ・カンクン大会では敗者復活戦にまわり、敗れて残念ながら3年連続のメダル獲得はできなかった。我が範疇のM9・66㎏では、2年連続のイタリアの不動の金メダリストが、今回M8から来たオランダ、アメリカ大会のカナダの金メダリストと準決勝で対決して敗退、敗者復活戦にまわると云う、番狂わせがあって、なかなか見応えある試合が展開された。自分は来年M9最後の年なのでメダルに手が届く可能性から一層遠ざかったのではと思いながらも、尚更筋トレに力が入る。 試合はいつも通り、大会初日にM6(55~59)からM10(75~79)のクラス、2日目はM1とM3、3日目はM4~M5、4日目はM2と女子であった。初日は比較的に年齢が高く、従って参加者が少なく、観客も少ないのが通例だが、予想に反して観客席は選手を含めて女性・子供など多くの人が詰めかけ、満席状態であった。試合が始まると自国選手に対する応援も盛んで、興奮したコーチの声が大きくて、審判から注意を受けると云う珍しいシーンがあった。私は、大会に対する熱気を去年のイタリア大会と同様に感じつつ、近頃ベテランズ大会の風向きが以前と比べてちょっと変わってきているなと思った。 自分が観客席に座って観戦していると、後ろの方に若手の選手らしき人が数人いたが、その中にどこかで見たような、小柄でがっしりとした体躯の選手を見た時、ウクライナのザンタラヤ選手ではと思ったので、すぐに声かけたら、やはりザンタラヤ選手であった。ザンタラヤ選手は直近の世界ランキング6位で、2014年ロシア大会で66㎏級で、海老沼選手と対戦しており、結果は3位であった。今年のバクー大会では阿部一二三選手と対戦し敗退したが、3位になっている有名なメダリストである。もちろん当該選手はベテランズ大会には出場できないので、誰かの応援で来たのであろうが、そんな世界的選手がわざわざウクライナから来て、この会場で観戦していることに驚いた。 私は対戦した相手からも、各国のベテランズの出場者のレベルや意気込みが一段と向上しているなと感じた。会場では随所にフランス、ブラジルの選手たちの姿が目に入った。そこで今年の各国の大会出場者の数はどうなのか、興味を引いたついでに調べて見たので披露したい。そこからそれぞれの各国のベテランズ大会、ひいては柔道への思いと熱意の一端が垣間見えるのではと、あえて載せることにした。 今年は出場者総数789人、内男子663人、女子126人、出場国は45カ国。出場者数の第1位はフランス(男女含む。以下同文)148人、第2位はブラジル144人、3位はアメリカ68人、以下ロシア45人、イタリア38人、メキシコ32人、ウクライナ22人、スエーデン21人、カナダ20人、アゼルバイジャン20人で、柔道母国日本は18人である。特に女子については出場者126人の内、フランス40人、ブラジル22人で実に半数を占めているが、我が国はたった1人ある。 そこでついでに去年のイタリア大会はどうであったのか調べてみると、出場者は男女合わせて1105人で、フランスは実に男女合わせて252人、ロシア69人、ブラジル59人、ドイツ84人、スペイン38人、ウクライナ33人である。フランスにとって隣国イタリアとは云え、サルディニア島が試合場なので、それなりの費用や時間も要する。にもかかわらずフランスは実に出場者の23%を占めると云う、圧倒的突出の前にひれ伏すだけだ。 更に一昨年のアメリカ大会ではどうだろうか。フランスは140人、ブラジル133人、開催国アメリカ151人で、我が国はいずれも20人以下である。フランス、ブラジル両国は開催国がどこであろうと、毎年多数の出場者を送り込んで来る、その名に恥じない柔道大国であることは間違いないだろう。これをどう見るのか、日本は強い柔道家がいるから出場者数の比較論は的外れだ、量よりも質が重要なのだ、あるいは柔道母国としてこの数は残念と思うのか等々、人それぞれによって考え方は異なるだろうが、一つ云えることは、この出場選手たちが、(老齢者を含めて)いずれも現役、つまりレベルは様々であってもそれなりの実践的指導者層を形成しており、自国の柔道の普及に日々貢献していると言っても過言ではないだろう。この多くの実践的指導者のもとで、多くの成人・児童青少年が日々柔道に打ち込んでいる姿が浮かんで来るのは私だけだろうか。 ずっと以前にベテランズ大会への出場者数の多寡は近い将来、柔道の底辺の拡大・普及と柔道大国→強国への道程に連動するひとつの指標となると思っていたが、今やそれは楽観的思い込みで、今年、去年、一昨年の国別出場者数を見て、もはや指標ではなくこれが現実なのだと認識せざるを得なくなった。以前からフランスは柔道大国とも聞いていた。だが一般的にヨーロッパでは幼少年期に柔道を習っても成人になるとやめてしまうのが通例だと聞いていたので、柔道大国といえども、その中身は未成年層が大半を占め