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概要

masters2018

32会報 <日本マスターズ柔道> 2018年1月9日嘉納治五郎師範と生涯柔道について日本マスターズ協会 前会長 清家 春夫 日本マスターズ柔道協会は、平成十四年に設立され、本年で十六周年を迎えることになりました。 設立の目的は、「生涯スポーツとしてのマスターズ柔道の普及・振興を図り、以て、会員の心身の健全発達と青少年の健全育成に寄与する」ことにあります。 昨年の六月十七日・十八日の二日間にわたり、和歌山県白浜町において開催された二〇一七年日本ベテランズ国際柔道大会(第十四回日本マスターズ柔道大会)が開催され、国内外から約六百人の選手が個人戦・形競技・団体戦に参加しました。 その中で注目されたのは、出場選手の中で七十歳代が六十三人、八十歳代が十一人参加、生涯柔道を実践している姿を示し、大会を盛り上げてくれたことでした。 マスターズ柔道愛好者が目標とする生涯柔道を実践した先人の中に、嘉納治五郎師範がいます。 師範は、明治十五年(一八八二年)五月、講道館を創設し、昭和十三年(一九三八年)五月四日、七十九歳で逝去されるまで日本傳講道館柔道の中核的存在であり、柔道を世界に広めるために多大な貢献をしました。 嘉納師範は、競技としての柔道を推奨するとともに、「柔道は、心身の力を最も有効に使用する道である。その修行は、攻撃防御の練習によって身体精神を鍛錬修養し、斯道の真髄を体得することである。そうして是によって己を完成し、世を補益するが、柔道修行の究局の目的である。」と唱え、柔道を通した人づくりを重視されました。 師範は、晩年まで古式の形を演武し、生涯柔道を実践しました。七十歳の時、天覧試合で古式の形を披露していますので紹介します。 昭和四年(一九二九年)五月四日、五月五日の両日、宮内省においては皇宮警察部の主催のもとに、皇居内の武道場において御大禮記念の武道大会が開催され、柔道の部で五月五日の天覧試合に出場できたのは、栗原民雄、牛島辰熊など四選手で、栗原民雄六段が優勝しました。 この時。講道館館長の師範は、山下指南役と荘重なる古式の形を演じて天覧に供しました。 昭和五年五月五日、大日本雄弁会講談社が発刊した「武道宝鑑」の付録巻頭に、柔道の古式の形、(取・嘉納師範、受・山下講道館指南役)の表十四本の写真が掲載されています。 同書の「はしがき」(昭和五年四月十四日付)の中で、「古式の形は、大会当日、陛下の御覧せられたものと全く同じ形で、武道精錬の極致を示したものであります。当時場所の都合や光線の関係から、完全に撮影できなかったものを、宮内省のご尽力により、本年一月末から二月初めにかけ、寒い雪空の中を、屋外に鯨幕を張って新たに演武場を設け、特に多忙中の先生方を招請して、前後数回に亙り、撮影して頂いた得難いものであります。」と説明しており、大会当日の古式の形の演武状況を知ることが出来ます。 特定非営利活動法人全日本柔道普及会の梅津勝子会長は、日本マスターズ柔道協会が発刊した記念誌「日本マスターズ柔道協会十二年の歩み」の祝辞で「嘉納師範が望まれた生涯柔道、このマスターズ柔道の誕生で、やっとその時が来たと、これに勝る喜びはありません。老若男女。家族ぐるみ、和気あいあいの生涯柔道が本物になったと思います。日本マスターズ柔道協会の益々の発展を祈り、心より祝い、応援して行きたいと思っております。」と述べています。 生涯柔道を目標とするマスターズ柔道の裾野は、年々広がりを見せていますが、さらに柔道を愛好し、継続する人を増やしていく努力が必要だと思います。 私たちが愛好する日本傳講道館柔道の伝統・歴史に学び、心身を鍛えるとともに、マスターズ柔道を通じて国内外の柔道仲間との交流・親睦を図り人生を豊かに楽しんでいこうではありませんか。 平成三十年の新年を迎え。日本マスターズ柔道協会の益々のご発展と会員・関係各位のご多幸・ご活躍をご祈念申し上げます。