ブックタイトルmasters2018
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masters2018
会報 <日本マスターズ柔道> 2018年1月9日21遭遇した。一間の間合いを取り、礼。片膝を立て組み合ってから、「はじめ」の合図がかかる。地域の大会だったが、審判は中学生のようだった。父母たちの応援も和やかだった。《楽しむクラス》 ここでは十二歳から、競技中心のクラスと、楽しみながら柔道を続けるクラスに別れる。その楽しみながらのクラスに参加した。年齢層の幅は広い。ウオーミングアップは、子供たちと同様のランニング。これに腹筋や背筋を付ける運動も加わる。技の指導は丁寧に行われる。乱取りもあるが、激しいものではなく約束稽古に近い。ある日は、入門して二カ月の白帯の人まで、護身術の形を学んでいた。 フランスでは、このクラスの人たちのためにも昇段の道がある。それぞれの段に昇段するための得点があり、三年前に、西フランスのその昇段試験を見学した。審査員は前日から集まり、その試験のための勉強会が持たれる。技術的な確認も成される。私には初めての柔術も加えられていた。翌日は朝から、審査員は三人が一組となり、項目別に一組ずつの試験となる。自分の研究した技の成果の披露もある。そして項目別に結果がその場で発表される。その結果について、その場で受験者が審査員に質問をすることも出来る。うらやましい姿でもあった。試合は好きではないが、柔道をひとつの文化として、楽しみながら技の理合、形のあれこれを学ぶ。 私は、この日本文化愛好者の皆さんから、たくさんの親切を頂いた。《美容体操としての取り組み》 ここには年を重ねた女性たちが集まる。平均年齢は七十代とみた。週に二回、休みなしの一時間。みっちりと動く。最高齢は八十七歳。背筋も伸びスタイルも見事だ。驚いたことは、各種の腹筋運動が六百回もある。私も負けまいと張り切り、腹筋痛に苦しんだこともある。この美容体操は、どこの道場にもある訳ではない。日体大出身の美和子さんが考案した、健康と腹部引き締めに役立つ一連の体操である。 実は私も、四年前から月に二回ではあるが、「柔の形」を取り入れた体操の会を続けている。この形を、緩やかに腕を伸ばしたり、身体を反らしたりするリハビリの形として活用している。柔道経験のない六十歳以上の女性が十人前後参加している。「形」として覚える気があるかは怪しいが、面白がって続いている。肩凝りに効くとか、頭の体操にもなると言う。受身も少し取り入れて、転倒防止に役立てている。呼吸法と共に「柔の形」は健康維持のために有効な運動であることを実証している。 修道館には、小さなBARスペースがあり、稽古後のおしゃべりを楽しむ。七、八月は夏休みとなる。六月末日には「いい夏を」と二ヶ月間の別れを惜しんでいた。《身体の動く限り》 柔道と出逢ったお陰で、健康な日常と、精神面でも救われたことが多い。仕事での困難に身内のあれこれ。末期癌で入院していた父に対しても、心をしっかりと持ち、介護することが出来た。投げられても立ち上がる精神が生きる。試合に臨む時も、自分なりに精一杯の稽古を積み、ほどよい緊張感を持ち、畳に上がれる幸せを感じる。いざとなったらやるしかないの度胸は、世界一人旅にも役立っている。 フランスで学んだことを、 所属する道場ですぐ紹介した。新しいことの好きな子供たちは喜んで、もっともっととせがむ。地元の子供たちにも紹介する日が近付いている。 私のささやかな柔道に対する恩返しだ。柔道を通し、身体と心を鍛え、子供たちが自らの力で、道を切り開き生きられる人にと祈る。身体の動く限り、私も柔道を続けられたら、どんなに幸せなことだろう。まだ見えない世界がきっと…。心豊かに生きるために、柔道はあるのかも知れない。(新聞翻訳)齋院志津子女史の滞在 齋院志津子さんは、親友の修道館教授のルビアン・美和子さんに迎えられ、一ヶ月間ブレストに滞在している。十年前に二人は、東京の講道館での夏期講習会で出会い、共に汗を流した仲である。黒帯五段の齋院さんは、三十五歳で柔道を始めたとか! 彼女は昨年、年齢、体重別の日本ベテランズ大会で優勝している。以前は世界大会でも二位の成績を持つ。 しかし、柔道は彼女の職業ではない。志津子さんは製本の先生と言えるほど、非常に芸術的な技術を見せている。三年前彼女は、このブレストに一か月滞在している。その滞在中ムーランの製本工房でドミニク・ドヤードさんのところで技術を磨いた。今回もその工房での勉強を続けている。志津子さんは、日本では数回個展を開いている。 ブレスト滞在中、グラスゴー街の柔道家たちは、彼女の経験を学ぶ機会を持ち、そして女性達の美容体操の人たちも同様に、それを見て、楽しむ機会を持った。日本に帰る前に、彼女はすでに訪れたことのあるスイスに一週間程、滞在する由。